世界連邦 Newsletter684 を発行しました。
第684号
世界連邦推進日本協議会 外務大臣と官房長官に政策提言を手交
世界連邦推進日本協議会は、2024年7月24日外務省にて上川陽子外務大臣、同日衆議院第一議員会館にて林芳正内閣官房長官に対して世界連邦に関する政策提言を手交しました。
世界連邦推進日本協議会は国内の世界連邦推進6団体によって構成され、主に政府への政策提言と世界連邦日本大会の主催を行なっています。世界連邦運動協会・大橋光夫会長、世界連邦日本国会委員会・衛藤征士郎会長、世界連邦文化教育推進協議会・宍野史生理事長が参加したほか、世界連邦運動協会から塩浜修理事、谷本真邦理事、野田武志事務局長が同席しました。
提言の主な内容は、次のとおりです。
1.国連改革の議論をスタートさせることを日本政府から呼びかけること。
2.ポストSDGsのための資金調達メカニズムとして国際連帯税およびその運用を行う国際機関を創設するための議論を国際的にリードすること。
両閣僚から「今年の未来サミット、来年の国連創設80周年などを機に、今後の政策立案に生かしていきたい」と前向きな言葉がありました。
なお、外務省からは後日、正式な回答をいただく予定です。
(野田 武志)
2024年度 世界連邦に関する政策提言
世界連邦日本国会委員会が創設75周年総会を開催
世界連邦日本国会委員会は5月23日(木)午後5時より衆議院第一議員会館国際会議室において創設75周年記念総会を行なった。谷本真邦事務局次長の司会で始まり、次の各氏より開会にあたっての挨拶があった。
衛藤征士郎会長より国会委員会が1949年に創設されて75周年を迎える旨の挨拶があり、顧問の山東昭子前参議院議長から世界の平和と国家間の貧富の差を無くしていくために共に歩んでいきたい趣旨が語られた。世界連邦運動協会の大橋光夫会長は運動協会が法人になったことを紹介し、「核兵器が万が一にも使用されれば人類が破滅する。世界連邦運動は何事にも勝る重要なものである。」と述べた。
続いて、岸田文雄内閣総理大臣からのメッセージを谷本次長が代読した。メッセージでは、1949年の世界連邦日本国会委員会創設宣言を引用しつつ、「国際社会が複合的な危機に直面する今こそ、我々は世界連邦の崇高な理念に思いを馳せなければならない。私自身、世界連邦日本国会委員会の顧問として、また総理大臣としても、その理念を忘れることなく、皆様と共に考え、共に励んでいきたい。」と語られた。
第一部の総会議事で、まず衛藤会長より役員人事の提案が行われた。元総理大臣の野田佳彦衆議院議員(立憲)を顧問に、猪口邦子参議院議員(自民)、谷合正明参議院議員(公明)、小池晃参議院議員(共産)、前原誠司衆議院議員(教育)を副会長に加えたほか、これまで会合に積極的に出席して発言した方々―衆議院より仁木博文氏(自民)、桜井周氏(立憲)、青柳仁士氏(維新)、浅野哲氏(国民)、鈴木敦氏(教育)、参議院より加田裕之氏(自民)、水野素子氏(立憲)、堂込(どうごみ)麻紀子氏(無所属)―を常任理事に加えた。上述以外の役員は昨年に引き続き全員留任となった。前年度活動報告・決算、今年度活動計画案と予算案について塩浜修事務局長から説明があり、全て原案通り可決された。
第二部では外務省を代表して深澤陽一外務大臣政務官から挨拶があった後、国連改革について意見交換が行われた。各議員からの主な意見は以下の通りである。
・大学時代、高坂正堯先生から「現実の政治に理想の翼をつける、それが外交である」と教わった。その精神で皆様と共に活動してまいりたい。
・人や物は、ある程度、国の枠組みの中で動いているかもしれないが、情報やお金は国の枠を超えて世界中を24時間飛び回っている。このような観点で、国家を単位にした世界が国民の幸せのためにこのままで大丈夫なのかと考えさせられる局面にきている。
・小児科医として、パレスチナで子どもたちが亡くなっていくことを思うと居ても立っても居られず、よく衛藤会長のところに手紙を書いたり、駆け込んだりしている。イスラエルの国際人道法違反に対して国際刑事裁判所が逮捕状を出したが、アメリカがそうしたことに後ろ向きである。国際法こそ平和へのパスポートであり、皆様と共に頑張っていきたい。
・JAXAという宇宙機関に以前いて、宇宙ゴミの問題、あるいは宇宙資源をいかに人類の未来のために分配ルートを考えるかなどをやってきた。しかし、やはりコンセンサス方式になってしまい、なかなか話が進まない。宇宙から見れば国境は存在しない。国益ではなく人類益、つまり人類の未来を考えることが重要だ。
・国連総会において国連憲章に基づく解決努力を重ねて、拒否権行使についても、拒否を行使した場合、総会で説明を行うことが必要になった。常任理事国の特権を見直し、国連総会により権限を与える方向での改革をさらにこの委員会において議論を深めるべきであると考える。
・2005年での終戦被爆60年の国会決議において、政府に対して日本国憲法の掲げる恒久平和の理念の下で、唯一の被爆国として世界の全ての人々と手を携えて、核兵器等の廃絶、あらゆる戦争回避、世界連邦への道の探究などの、持続可能な人類共生の未来を切り開くという最大限の努力を求めた。あれから20年経つが、今こそ日本政府がそのような立場で、NPTとともに核兵器禁止条約にも参加して、被爆国としての役割を発揮するべきだ。
・50年前に、アフリカで電気、ガス、水道もない場所で、文化人類学の学びを始めた。
その時に、“The limit to growth”、「成長の限界」をローマクラブが発表し、当時まさか地球規模でこのように資源の枯渇が起きるとは、ほとんど誰も予想しなかったが、実際このような状態になっている。特に水というものは、大地から離すことによってお金に変えることもできるし所得の足しにもなるが、住民が大地と共に水を守り利用するコミュニティーベースドマネジメントが今の時代こそ必要だ。環境社会学者としての研究成果を、どうにか政治の世界で活かしたい。
・今週の月曜日に、衛藤会長と共に、台湾の頼清徳新総統の就任式に出席した。現在台湾をめぐる情勢は中国からの圧力など大変厳しいものがある。ウクライナ情勢を見ても、国連常任理事国で拒否権をもつロシアが侵略を行なっている。その中で、国連がいかに国際社会のなかで、しっかりとした平和を維持する機能を果たしていくことができるのかが問われている。日本が今後、様々な責任や役割を担っていけるようにしていかなければならない。
・私の経験は90年代に学生の頃NGOで、カンボジアの子供のための学校を建設する等の活動から始まった。ユーゴスラビアでも活動をした経験がある。日本の問題は解決に向かって行き、私たちの世代の人生は世界平和のための人生になっていくのだろうな、と感じていた。残念ながら、過去30年の体たらくには、非常に悔しい思いをしている。いかに紛争を防ぐか考えるとともに、私自身は水循環に関して専門にしているので、そちらの方面からも努力していきたい。
・ガザの戦争の犠牲者の多くが女性と子供である。若者、女性という周辺性の中、女児はさらなる周辺に追いやられがちである。女児に対する重点化をPact for the futureの中に入れていただきたい。
・国連改革をしていく上でも、世界連邦を目指すのであれば、世界各国の市民が文化や芸術、宗教などで交流を深めていき、底上げをしていくことが重要である。現実的に動いていくのは我々議員や政治家だが、その議員を支える国民の層を厚くしていかなくてはならない。
その後グローバルガバナンス推進委員会の長谷川祐弘座長(元国連事務総長特別代表)から国連において9月に行われる未来サミットと、そこで作成されるPact for the future(未来のための誓い)についての説明と私見が語られた。これに対して外務省の総合外交政策局松尾裕敬参事官や安藤重実国連政策課長からのコメントがあった。
国際機関から国連広報センター根本かおる所長、国連開発計画ハジアリッチ秀子駐日代表世界銀行米山泰揚駐日特別代表が意見を述べ、中川正春事務総長、衛藤征士郎会長の締めくくりの言葉で閉会した。
【国会議員本人出席】(敬称略)
自民党 衆議院:衛藤征士郎、田中英之、深澤陽一 参議院:猪口邦子、山東昭子、堀井巌
立憲 衆議院:阿部知子、逢坂誠二、中川正春、森山浩行 参議院:塩村あやか、水野素子
維新 衆議院:浅川義治 参議院:梅村みずほ
共産 衆議院:笠井亮
国民 衆議院:玉木雄一郎
教育 衆議院:徳永久志、前原誠司 参議院:嘉田由紀子
無所属 参議員:齊藤健一郎
(塩浜 修)
世界連邦日本国会委員会がUNDPアラブ地域局長との意見交換会を開催
UNDP(国連開発計画)アラブ地域局長のアブダラ・アル・ダルダリ氏によるスピーチは、HDPネクサスに重点が置かれていた。HDPネクサスとは、人道危機に対して人道・開発・平和(Humanitarian, Development and Peace)の三本柱について、それぞれに携わる様々なアクターたちが、バラバラにそれぞれの活動を行うのではなく、より緊密に連携し、相乗効果を出すような分野横断的なアプローチを促進するものである(ネクサスnexus:つながり)。スピーチの概要は以下の通りである。
人道・開発・平和構築は順番に起こるものではない。現在、第二次世界大戦以来、最も多くの紛争が発生しているが、紛争の最初の時点で平和、開発、人道支援すべてに投資することが必要である。人道支援単体では効果的ではない。例としてスーダンでは、紛争は30年もの間放置され、気候変動による砂漠化、水不足を容認し、それら水や、肥沃な大地を巡った紛争が起こっている。人道支援のみでは、様々な組織がその支援を巡って戦うことになってしまう。 今日のガザでは、停戦を達成することに集中するべきではあるが、同時に私たちは停戦後のことも考えなくてはならない。ガザの復興、修復計画の開始は一刻も早く行なってこそパレスチナ人に希望を与えることにもなる。ガザが最も危険な時期は現在ではない。最も危険なのは停戦後に我々国際社会が直ちに人道支援と開発支援を行えないことである。 現在ガザの国連スタッフは、水の提供や、医療支援など生活必需品を提供できるような支援を行なっている。国連職員は、爆撃のなか、命を危険に晒して支援している。現地の国連スタッフは、安全地帯を探すために、すでに5回も移動を余儀なくされている。 こうした活動を拡大するために、あなた方のような国会議員の皆様のお力と支援が必要である。私が今日、日本政府、国会議員、民間セクターの皆様とお話するためにきた理由は、現在のガザの人々に対して、どのように緊急支援をし、また停戦後の開発、復興援助をどのように国連とともに行なっていくのかを皆様とともに考え、行動していきたいからである。
以上のスピーチを踏まえ、グローバルガバナンス推進委員会の長谷川祐弘座長(元国連事務総長特別代表)をモデレーターとして国会議員との意見交換が行われた。いくつかの意見を記す。
・停戦後の準備をして復興を早くするというのは大変素晴らしいご指摘である。私は東日本大震災の時に官房長官をしており、あの時に最初にしなければならなかったのは瓦礫の処理であった。まさにこのUNDPのペーパーにも瓦礫の管理と書いてあるが、やはり瓦礫の管理をまずしないことには次の復興は成り立たない。しかし、瓦礫の処理にはかなりの資金と人員を必要とし、そこでインフラの整備が滞る。日本は東日本大震災や、今年の能登地震なども含めて、瓦礫の管理やインフラの復興に関して一定の知見を持っているので、その点では日本国も貢献できればと考えている。
・私は2015年にガザを訪れ、ガザの子供達、あるいはガザの学校の先生方を日本に招待して、広島で研修を行うというプロジェクトにも関わった。停戦後の復興を今から描いていくことに同意するとともに、その際に、統治機構をどうするのか、また二度と戦争を起こさせない状況をどのように作っていくのか議論を深めて参りたい。
・私は議員として災害関係の担当をしているので、能登半島においても、現在、漁業・農業など自分たちの生業をこの先どのように生きていくのかということを示していくことが非常に大事であると痛感している。瓦礫の撤去に関して、実は日本において瓦礫と瓦礫でないものの線引きが難しい。例えば、半分壊れた家でも財産として所有権が問題となるなどである。どこで線引きをして撤去するのかについて、法整備が必要になっており、技術的な面だけではなく、法整備の面などに関しても現地に解決策を持って行ければよいと考えている。
・ラファが攻撃され、多くの女性・子供が殺害されることも起きており、まさにガザにおけるジェノサイドという、許しがたい深刻な人道危機を打開するために一刻の猶予もないことを改めて痛感している。大規模空爆の中止、速やかな停戦に向けて国際社会が力を合わせて行わなくてはならない。日本共産党もガザ支援募金として全国各地で3000万円を国連機関や、NGOに届けているところである。力を合わせて人道支援を行っていかなくてはならない。
・アジア圏において「弱い立場の方々に、魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えるのが重要だ」という故事がある。人道支援に偏らずに、同時にコミュニティー構築等も進めなければならない、依存という状態を作らないことがいかに重要であるかを、本日のダルダリ閣下のお話から伺った。
・ガザの問題を即時停戦で解決するために、国際社会が一致して取り組む必要がある。日本政府は、ロシアのウクライナ侵略については国際法違反と国連憲章違反であると言うが、イスラエルの問題に関してはそうは言わない。このダブルスタンダードが大きな問題である。国際法はどの国に対しても同じ重みを持って適用されなければならない。そのために、国際社会が一致した声を上げていけるように取り組んでいきたい。
・開発計画において、どのようにパレスチナの人々に雇用を創出し、人々が外国からの援助に依存することなく発展していけるようにするかが重要だ。日本において男女平等の達成は何十年もかかったが、男女平等の社会になった時、女性はすでによく教育を受けていたので、社会進出のための教育を待つ必要がなかった。また、日本の平和憲法によって平和へ貢献できることは限られているが、我が国は地雷除去において高い技術を有しており、その点でも貢献できる。地雷除去によって農地が戻り、その余剰分を産業分野にて使用することで、外国からの支援等に依存しない社会を作ることができるだろう。
国会議員の意見を聞いて、ダルダリ氏から次のようなコメントがあった。
現在、ガザという小さな地域に、70%の家屋が破壊されたことによって、凄まじい量の瓦礫が存在している。それらには不発弾と多くの死体が埋まっている。よって、時間を浪費している余裕はない。人道支援を行なってから、復興に移るなどという悠長なことはできない。休戦後、ラファが通行可能になったタイミングで、すぐに瓦礫の撤去を行う機材を搬入する必要がある。5万もの移動式の家がラファにすぐに入る必要がある。これはリスクもあるが、大変良い投資である。このガザの状況が続けば、中東の安全保障を脅かし、エネルギー安全保障にも深く影響してくるだろう。
外務省国際協力局の日下部英紀審議官や中東アフリカ局奥史織政策調整官のコメントに続き、中川正春事務総長より締めくくりの挨拶があり、本会は閉会した。
【国会議員本人出席】(敬称略)
自民 衆議院:仁木博文 参議院:猪口邦子
立憲 衆議院:阿部知子、中川正春、森山浩行 参議院:塩村あやか、福山哲郎
維新 衆議院:浅川義治 参議院:梅村みずほ
公明 参議院:谷合正明
共産 衆議院:笠井亮 参議院:山添 拓
教育 衆議院:斎藤アレックス
無所属 衆議院:海江田万里(衆議院副議長) 参議院:齊藤健一郎
(塩浜 修)
世界連邦関係各団体の動き
6月13日 国連事務次長(政策担当)ガイライダー氏と世界連邦国会委員会の意見交換会
6月19日 国連大学学長・国連事務次長マルワラ氏および国連システム学術会議のメンバーと世界連邦国会委員会との意見交換会
6月25日 国連事務次長・国連開発計画副総裁ハオリャン・シュウ氏と世界連邦国会委員会の意見交換会
7月 9日 三鷹市世界連邦運動協会総会
7月 9日 平和を考えるフォーラム学習会(オンライン)
7月23日 世界連邦 京都・大阪総会
7月25日 世界連邦宣言自治体全国協議会総会
8月14日 平和を考えるフォーラム学習会(オンライン)
8月23日 一般社団法人 世界連邦運動協会理事会
編集後記
☆持続可能な財政状況を保ち、情報発信の最適化およびペーパーレス化を図るため、Newsletter 684号(2024年8月1日号)よりデジタル化することになりました。試行錯誤の連続ですが、内容もこれまで以上に充実させ、読みやすく、タイムリーにお届けできるようにデジタル時代のNewsletterの新しい形を模索していきますので、引き続きご愛読くださいますよう、よろしくお願いします。(川口)☆しばらくぶりに政策提言を行うことができて嬉しい。それより前の6月26日には、大橋会長が岸田文雄総理に面会し、世界連邦や核廃絶への想いを訴えた。(塩浜)☆本号掲載の記事「世界連邦国会委員会がUNDPアラブ地域局長との意見交換会」では、人道・開発・平和構築の観点からパレスチナ地区ガザにおける諸問題がクローズアップされた感がある。ハリス米国副大統領は、7月25日、イスラエルのネタニヤフ首相との会談で、ガザの人道状況について「深刻な懸念」を伝え、停戦合意を迫った。会談後、ハリス氏は「この戦争を終わらせる時が来ている」、「私たちは苦しみに無感覚になってはならない。私は沈黙しないつもりだ」と語った。この良識ある率直な発言を、私は支持する。イスラエルとパレスチナの一方に偏ることなく、米国も世界平和の観点から中東政策を大幅に変えるべきだ。(平口)
編集委員会 / 委員長: 川口美貴、 副委員長: 塩浜修 平口哲夫、 委員: 野田武志 谷本真邦